【短編小説 7】クイズショウ
僕は、世界で一番、マンゴーが嫌いだ。
それを説明するには、ちょっと骨が折れる上に、激しく恥ずかしいのだが。
人間、生きていればいろんなことがあるもんだ、と人生の悟りを開いてしまい、友人知人に呆れられたのだが、この話を聞くごと、誰もがぴたりと口を閉ざす。
まあ、どんなもんだか聞いてやってくれ。
その日は、何の変哲もない日曜だった。
会社も休みで、彼女も用事があるからデートもお預け。
珍しく、なんの予定もないこの休日、僕はゆっくり日ごろの疲れを癒すことに使うことにした。
学生時代は、昼過ぎまで寝たくって、起きたらテレビ見てゲームして、食事はカップ麺とかで、気付いたら夕方で、またなんか寝ちゃって、なんていう、怠惰極まりない生活をしていた。
あの頃が急に懐かしくなって、でもさすがにそんな休みの使い方ももったいないな、なんて思いながら。
いつもより、少し遅めの朝を迎えながら、僕は家でゴロゴロしていた。
食事に外に出るのもおっくうで、カップ麺を作ってみる。
で、出来上がって、ずるずるとただ食べるのもなんだったので、テレビをつけてみた。
バラエティ番組とか、旅番組とか、イロイロやっていて、チャンネルを適当に回しながら、ラーメンをすすっていく。
そして、とある番組にきた瞬間、僕は盛大に麺を噴き出していた。
あーあー汚いなあ、って思うかもしれないが、これが噴出せずにいられるかってもんだ。
だって、テレビには、うちのおかんが映っているのだ。
しかも、服は年甲斐もなくキャミソールに、目が腐るような膝丈のひらっひらのスカート。
そして、手にしているのは、なんでか○と×のプラカード。
それを、アホかってほど真剣な目で見つめているのだ。
一体何が起こっているやら、さっぱり理解できないでいると。
僕はさらに、そのまま持っていたカップ麺を天井までぶん投げる羽目になってしまった。
それは、そこへおとんがタキシードを着て出てきたからである。
しかも白タキシード。結婚式の時の写真ですら見たことがない。
唖然とするより、部屋中麺が飛び散って大変なことになってしまったので、とりあえず掃除をしながら画面を見ていると。
どうやら、何かのクイズ番組らしい。当たると豪華商品が当たる、っていう企画で、どうやらおとんとおかんは、視聴者ゲストみたいな感じらしいのだが。
……とりあえず、どう突っ込んでいいものやら。
もうちょっとましな服は無かったんか、おとんもおかんも。
ていうか、せめて統一してくれ。
そうこうしているうちに、なんか問題が出された。
「息子さんが今、はいているパンツの色は赤! ○か×か」
その問題に、再び僕はテーブルに突っ伏し……その折、足の小指をしたたかにテーブルの足にぶつけて、マジ泣きしながらのたうちまわる羽目になった。
おかんが、真剣な目で○をあげている。
ていうかバカめ、僕がそんな色のパンツなんて……。
……は!?
そういえば、今日は彼女がくれた、赤いパンツはいていたような……。
なんて思っていたら、唐突にドラムロールが当たりに響きわたり、僕はめちゃくちゃに驚いて、足の痛みも忘れて立ち上がった。
すると、いきなり部屋の押入れから、マイクを持った男の人と、カメラを構えた男の人が、乗り込んできた。
あまりのことにぱくぱくしていると、男は「はーい、では息子さんに聞いてみましょー! 今日のパンツの色は~?」
その問いかけに、僕が答えられずにぽかんとしていると。
男は、ばっと僕の服をめくりあげて、そしてほがらかに絶叫した。
「赤です!! 正解!!!」
全国ネットで、なんという生き恥だ!!!!!!
結局、なんかやたらファンファーレやらドラムやら、いろんな楽器が鳴り響き、中継でも終わったのか、はいお疲れ様、って言いながら、彼らは僕に、ジュースを一本渡してくれた。
はあ、どうも……とか、間抜けな返事を返しているうちに、男たちは、何故かまた押入れから帰っていき……。
そこで、僕ははっと我に返って、その押入れをばっと開けた。
当然、中には何も無い。
普段の押入れのまんまだった。
……ちょっと待て。
じゃあ今の奴らは、どこから現れて、どこへ消えていったんだ。
狐にでも騙されたのか、なんて思ってテレビ画面を見て、僕は再び飲みかけたジュースを盛大に噴き出した。
さっきのマイクを持っていた男が、テレビに出ているのである。
いくらなんでもおかしいだろお前ええええええ!!!
絶叫しかけた僕に、さらにテレビ画面が追い討ちをかけてくる。
なんと、僕の彼女がその場に一緒にいるのだ。
それこそ、さらに待ってくれ。
両親に彼女を会わせたことなど、一回もないんだが……。
どこで知り合ってんだ。
それより、いったい何が起こってるんだ、この番組。
混乱する俺を一人置き去りにして、番組は終了に近づいていた。
おとんとおかんは、正解して商品をもらい、満足げに頷いている。
手にしているのは、何故か大量の完熟マンゴー。
そして、彼女も一緒になって、そのマンゴーを持って喜んでいた。
……頼む。
誰か、この状況を説明してくれ。
そして、そのまま僕はばったりと倒れ、意識が遠のいた。
気付いたのは、翌日早朝。
僕の休日は、いつの間にか終わっていた。
さすがに腹が立って、いの一番、実家に電話してみると。
そんな番組なんぞ知らない、とのたまってくれる。
そんなバカな、と、今度は彼女に電話をしてみると、夢でもみたんでしょ、朝のくそ忙しい時間にアホみたいなことで電話かけていちゃもんつけんな、とかけちょんけちょんに怒られて、電話が切れた。
……テレビ番組欄を確認してみると、確かにそれらしい番組名など、どこにも載っていなかった。
もちろん、衛星放送なんて洒落たものは、金銭的都合で入ってなどいないし、ケーブルテレビなんてものも、当然無い。
だから、地上波以外の放送が入るとかも、ありえない。
一体なんだったんだ、と首をかしげながら、確かに夢じゃなかったんだとは理解していた。
何故って、ジュースの空き缶が転がっていて、中身がこぼれているわ、部屋が微妙にまだ、ラーメンが飛び散っていて、汚れていたりするからなんだが……。
考えても埒が明かない。
あきらめて部屋の片づけをしてから、僕は会社に行くために家を出た。
むろん、会社でも番組を見たかどうか聞いたのだが……。
そんな番組を見ている人は誰もおらず、結局は僕が見た白昼夢だったんだ、ということで片付けられてしまったのだが……。
翌々日。
僕は、思い知らされることになる。
世の中には、時々よく分からないことが起こるのだと。
なぜならば、夜、家にいる折届いた宅急便の荷物をあけると、中に大量の完熟マンゴーが入っていたからだ。
差出人は、何故か僕の名前になっていた。
まるで意味が分からない。
後日確認すると、僕名義で実家と彼女の家にも、同じものが送られていたらしい。
それはそれはもう、死ぬほど感謝されたが、思い当たるところありまくりな僕は、愛想笑いでごまかすしかなかった。
そして、首を傾げながらも食べたマンゴーが、実はアレルギーだったらしく、僕は三日三晩生死の境をさまようことになる。
僕は、世界で一番マンゴーが嫌いだ。
今でも僕は信じて疑わない。
これは、僕を殺したかった、誰かの陰謀なんだと。
ちなみに、真相は今もって闇の中である。
おしまい。
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同じく転載です。
07年10月3日UP。
なんだかもう、よくわかんない話になっちゃいました。
ジャンル不明です。なんていうの、こういうの???
ちょっと不思議視点からの、不思議な感じのお話です。
主人公は、一体何に狙われていたんですかね(笑)。
あ、お題は「キャミソール」「マンゴー」「ドラム」でした。
イロイロだいぶこじつけです(爆)。
実はちょっとオチも用意していたのですが、面白くなくなるかも、と思い、余韻をもたせて終わってみました。
楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに、私はもし、おかんがキャミ着てテレビなんか出てきたら、その場で張り倒しにいきます(笑)。
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