【短編小説 4】あたしのデート
今日のあたしは、めっちゃ機嫌が悪い。
彼が話しかけてきても、今日は知らんぷりを決めこんでる。
顔も、ずーっとふくれっ面。
あたしの笑顔が好き、って言ってくれたけど、今日はぜえったいに笑顔なんか見せてやんないんだから。
だいたい、ことのはじまりは、彼が悪い。
付き合い始めてまだ一ヶ月。
遊園地行ってデートしたい、ってお願いしたら、遊園地は嫌いだから嫌だって言った。
それはもういい。
でも、その代わりにって連れて行ってくれたのが、よりにもよって山登り!
激闘5時間。
へとへとくたくたになって上り詰めた頂上は、霧でなんにも見えなかった。
挙句、帰りはすたすたと自分だけどんどん降りてって、あたしのことは置いてけぼり。
途中で拾った木の棒を杖に、必死になって付いていったけど、深い霧で結局はぐれちゃって。
遭難しかけた挙句に、足滑らせて捻挫。
全治2週間。
後から降りてきたお兄さんが、大べそかいてるあたしを連れて降りてくれた。
とっくの前に山をおりてた彼は、待ちくたびれて不機嫌そのもの。
泣き疲れ、足をひきずり、よろよろぼろぼろの私を見るなり、彼の第一声はこれ。
お前、遅いよ。足くじくとかありえねえ。どんくさいしバカだなあ。ときた。
その言葉に、あたしがキレるより先に、一緒に連れて降りてきてくれた人が大大大激怒。
小一時間、彼に向かってどんだけあたしが危険な状態だったのか、下手すりゃ死んでたんだぞ、てな勢いで、さんっざんお説教してくれた。
反省したのかしてないのか、彼はその場でめっちゃ謝ってくれて、あたしも怒るタイミング逃しちゃったし、その場は許したんだけど。
その後、お詫びにって買ってくれたのが、なんでか全長2メートルもあるテディベアのぬいぐるみ。
5万もしたとか抜かす。
そんな金があるなら、おいしいものでもおごってみろって言いたかったけど、我慢した。
このテディ、あまりにでかくて邪魔で、結局あたしのベッドを占領。毎晩テディと一緒に眠る自分が、なんだか悲しい。
小さい頃にだって、ぬいぐるみと一緒に寝たなんて記憶、まったくないのに、なんだって大人になってから、こんな状況なんだろう。
で、あたしの部屋に泊まりに来た彼が、ソレを見て、不機嫌極まりない声で、一言。
俺と寝ないで、テディと寝てるんだ、と。
その一言で、あたしの中で何かがキレた。
それはもう、彼が泣いて謝る勢いで罵詈雑言を並べ立て、いい加減にしろ、もう別れてやるんだ!! って大騒ぎ。
泣きじゃくって泣きじゃくって、一晩さんざんあたしがわめいて、彼が謝り倒して。
で、そのお詫びの印が、最初に行きたいってあたしが言った、遊園地に連れて行く、ってことで、それが今日。
たかがデートで遊園地に行くのに、遭難しかけて、足捻挫して、ベッドまで占拠された。
なんて遠回りしてんだ、あたし。
しかも、遊園地に来たはいいけど、絶叫系は彼は乗れないっていうし、ホラーなところは怖くて入れないっていうし、回転系は酔うから嫌だとか言うし。
おかげで、一緒に乗れるものがほとんどなくて、結局一人で全部のアトラクションに、乗りまわっている。
そんなわけで、あたしは今日は、はげしくめちゃくちゃに機嫌が悪い。
困りきった彼が、一緒に乗るならまあこれで、と諦めて指差したのは、観覧車。
これならまあ、高所恐怖症だけど頑張る、と。
まったく、一ヶ月で、まさかここまで彼のへたれっぷりを思い知らされるとは、思わなかったわ。
とりあえず、観覧車には乗ろう。
そして、なおも恐怖にひきつった顔で、一緒に観覧車に向かう彼の横顔を見ながら。
よし決めた。
今日このあと、さんざん遊んで、さんざんおごってもらってから、とっとと別れよう。
そんでもって、別れ際にだけ、とびきりの笑顔をみせて、それを彼の思い出にしてもらおう。
だから、観覧車の中も、その後も、今日はてってーしてふくれっ面で通すんだ。
そして、心に強く誓う。
次の彼は、あたしが命をかけないでも、遊園地に連れてきてくれる、そんな人を選ぼうと。
そして、このテディと一緒に寝てくれる人を選ぼう。
山登りの時、あたしを助けて、一緒に山を降りてくれたお兄さんあたり、いいかもしんない。
メアドは交換したし、あとで早速連絡しなくちゃ。
さ、とりあえず、まだ今日は長い。
彼との最後のデートなんだもの。
気合いれて、不機嫌貫くわよ。
おしまい☆
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前作と同じく、転載です。
07年8月27日UP
珍しく、ティーンズ系の女の子一人口調のお話。
ほとんどやったことないので、なんだか中途半端なイメージになってしまいました。
ぬう。
意外と難しいのですね、こういうのって。
ちなみにテーマは「棒」「ぬいぐるみ」「観覧車」。
おかしいなあ。
もっと恋愛色の強い、少女漫画チックなものにするつもりだったのに、なんだこれ(笑)。
でもきっと、女の子ってこんなもんです(おい)。
ま、テーマは「女の子は怖い」ってことで(だから)。
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